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【fluct Magazine 過去記事】niconicoを運営する株式会社ドワンゴにメディアの価値について聞いてきました!

fluct Magazine

2015.09.23

【fluct Magazine 過去記事】niconicoを運営する株式会社ドワンゴにメディアの価値について聞いてきました!

以下は、niconicoを運営する株式会社ドワンゴに伺ったインタビュー記事です。インターネット文化を形作ってきた同社が、どのように広告と向き合い、メディアの価値をどのように再定義しようとしているのかをお届けします。

メディアの可能性を問い直す、ドワンゴの挑戦


── まずはじめに、永山さんの自己紹介をお願いします。
2008年4月に新卒で株式会社ドワンゴへ入社し、以来一貫して純広告のオペレーションおよびniconicoを活用したコミュニケーションプランニングに携わってきました。2013年からはアドテク領域も兼任し、広告マネタイズ全体を担当しています。

── niconicoのサービス概要と特徴について教えてください。
niconicoは「コミュニケーションプラットフォーム」として、ユーザー同士のつながりを重視するインターネットサービスです。中核である「ニコニコ動画」に加え、「ニコニコ生放送」「ニコニコチャンネル」「ニコニコ静画」など、多様なメディアを展開しています。
登録ユーザー数は5,000万人に達し、そのうちプレミアム会員(有料会員)は約250万人。月間アクティブユーザー数は873万人を超え、1日あたりの平均利用時間は100分と、国内でもトップクラスの滞在時間を誇っています。主なユーザー層は10〜20代で、女性比率は約34%です。

広告マネタイズの進化と体制


── niconicoの広告マネタイズの歴史を教えてください。
2006年12月にサービスを開始したニコニコ動画は、翌年2007年6月からプレミアム会員制度と純広告の販売を開始しました。2008年には「ニコニコ生放送」でスポンサーと連携した番組タイアップを展開。2014年からは動画広告の運用も本格化し、収益の多様化を図ってきました。

── 純広告とネットワーク広告はどのように役割分担しているのでしょうか?
純広告やタイアップ広告などの直接取引を最優先とし、企画や設計に多くのリソースを投じています。たとえば「ニコニコ超会議」では、リアルイベントと連動した広告展開を実施。TOYOTA様との「電王戦×TOYOTA リアル車将棋」では、本物の車を将棋の駒に見立てたライブ配信企画も行いました。
ただし、すべての純広告枠が常に埋まるわけではありません。そのため、空いた枠についてはネットワーク広告を活用して補完的にマネタイズを行っています。

── ネットワーク広告事業者の選定基準は何ですか?
最重要視するのは収益性です。現在は約15社の広告事業者と取引しており、1社に依存せず、複数のネットワークを併用する体制を構築しています。これは障害時のリスク分散にもつながっています。

そのほかにも、広告のフィルタリング機能やブロック機能の柔軟性、niconicoの世界観を損なわない設計が可能かどうかといった観点も重視しています。また、サービスやユーザーへの理解が深く、率直な意見を伝えてくれるパートナーであるかどうかも、信頼関係構築の重要な要素です。

── 現在の運用体制について教えてください。
運用は3名体制で行っており、業務を属人化させないため、すべてのメンバーが全業務を把握し、日々の数値確認も全員で行っています。
とくにスマートフォン向け広告はeCPMの変動が大きいため、日次での調整が必要です。現在管理している広告枠は約800。すべてを毎日チューニングすることは現実的ではないため、収益性の高い枠から優先的に対応しています。

ユーザー体験を軸にした広告設計


── 広告運用において、特に重視していることは?
最も大切にしているのは、「ユーザーに寄り添った設計」です。広告主の意向を尊重しながらも、ユーザーが不快に感じない、あるいは楽しめる体験を提供できるように心がけています。とくにタイアップ広告では、「どうすればユーザーに喜んでもらえるか」を常に意識して設計しています。

niconicoにとっての競合とは?


── YouTubeと比較されることが多いと思いますが、実際の競合は?
YouTubeは確かに動画共有サービスとしての競合ですが、niconicoは「コミュニケーションの場」であるため、競合は動画に限りません。LINEやFacebook、テレビや雑誌、ニュースアプリ、ゲーム……ユーザーの可処分時間を奪い合うすべてのサービスが競合になりえます。

── ユーザーの可処分時間を獲得するために、どのような特徴を打ち出しているのですか?
1つ目は、「コンテンツが進化する設計」です。ユーザーが投稿したコメントが動画にリアルタイムで重なり、視聴体験が進化していきます。毎回異なる文脈が加わることで、同じ動画であっても常に新鮮な体験が得られる点が強みです。

2つ目は、リアルとの接点です。「ニコニコ超会議」や「ニコニコ本社」など、オンラインとオフラインを融合した立体的なコミュニケーションを提供しています。こうした連動性は、niconicoならではの体験価値だと考えています。

メディア価値をどう伝えるか


── これらの特徴を広告主にどう伝えていくべきでしょうか?
現在主流のRTBでは、広告の価値はPVや属性だけで測定されがちです。しかし、ユーザーの“関与度”や“没入体験”までは可視化されていません。
たとえば、テレビを見ながらスマートフォンを操作しているときに閲覧される広告と、niconicoで動画を視聴し、さらにコメントまで投稿しているときの広告とでは、受け手の集中度が大きく異なります。将来的には、こうした態度変容を反映した評価指標が必要だと考えています。

今後の取り組みとアドテクへの期待


── 今後注力したい取り組みについて教えてください。
まずはDMPの導入です。ユーザーの行動データを活用することで、より最適な広告配信が可能になり、広告によるストレスの軽減にもつながると考えています。とくに自社で保持するデータを活かしたプライベートDMPを検討しています。

加えて、PMPの活用も視野に入れています。今後、広告の定義や配信構造が変化するなかで、より適切な価値交換が可能となるよう、メディア側も進化していく必要があると捉えています。

── アドテク業界に期待することがあれば教えてください。
国内市場では、アドテクが広告主中心の技術として進化してきましたが、メディアやユーザーにとっての革新性はまだ十分とはいえません。

今後は、1インプレッションの価値を高めるための指標づくりや、メディアと共創するプロダクト開発が重要になると感じています。私たちとしても、その取り組みに主体的に関わっていきたいと考えています。

今回インタビューにご対応いただいたのは……
株式会社ドワンゴ 営業本部 広告営業部 永山 隆浩さん。
貴重なお話をありがとうございました。