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【fluct Magazine 過去記事】レバレジーズ株式会社にインハウスで広告運用するために大切なことを聞いてみました
2016.04.18
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インハウス運用にこだわる理由とは
人材系メディアを数多く運営するレバレジーズ株式会社。日本では珍しく、広告運用をすべてインハウスで行っています。なぜ代理店を使わず、自社で運用するのか。今回は経営企画本部プロモーションチームの責任者である棚橋寿充さんに、その背景や実践について話を伺いました。
プロフィールとレバレジーズの歩み
まずはご自身とレバレジーズについて教えてください。
レバレジーズは、現代表の岩槻が一人で創業したベンチャー企業で、今年で12期目を迎えました。創業当初はシステム開発やSES事業からスタートし、現在ではIT系人材から看護師まで、幅広い領域で人材支援を行うメディア企業へと成長しています。従業員数は現在500名を超えました。
私は新卒でレバレジーズに入社し、現在5年目です。入社当初はマーケティング部門の立ち上げ時期で、アフィリエイトやDSPの広告運用からスタートしました。その後、LPOや視認効果の検証、アトリビューション分析など、多角的なアプローチで施策を実行してきました。2016年からはプロモーションチームの責任者を務めています。
運用メディアとプロモーション体制
レバレジーズはどのようなメディアを展開していますか?
『レバテックフリーランス』『レバテッククリエイター』『レバテックキャリア』といったIT系人材メディアをはじめ、看護師向けの『看護のお仕事』やアルバイト求人サイト『バイトーク』も展開しています。今後は人材領域以外への事業拡大も見据えています。
プロモーションチームの役割とは?
私たちのチームのミッションは、会員数を増やし、メディアの成長を促進することです。扱っている媒体数は約10。それぞれのメディアに担当者を置き、ターゲットや予算に応じて会員獲得の運用を行っています。
広告予算の規模について教えてください。
月間で運用している広告費は億単位にのぼります。ただし、これはプロモーションチームの一括予算ではなく、各メディアが必要と判断した分を私たちが運用する形式です。
具体的には、メディア側が必要な会員数を算出し、それに基づいて私たちが想定CPAから必要予算を提案。合意が取れれば運用を開始するという、ボトムアップ型の運用体制を取っています。
運用型広告の比率は?
全体の広告費のうち、運用型広告は約3〜4割程度です。残りは純広告やアフィリエイトに振り分けています。複数のDSPを試しましたが、獲得効率から現在はほぼ1社に絞っています。一方で、そのカバー外を補うためにGDNやYDNも並行して利用しています。
重視している運用手法
広告運用で大切にしていることは何ですか?
入札単価の調整が鍵だと考えています。特に、ディスプレイ広告では、わずかな単価差が配信量に大きな影響を与えるケースがあるため、適切な「しきい値」の見極めが欠かせません。
また、近年力を入れているのがデータフィード広告です。効果的なフィード設計が、クリエイティブの成果に直結するため、設計段階から丁寧に取り組んでいます。
アトリビューションへの取り組み
なぜCPA以外の指標にも注目するのですか?
CPAは重要な指標ですが、会員獲得までのプロセス全体を捉える視点も不可欠です。たとえばSEOや口コミでの登録が増えてきた段階では、ラストクリックだけに注目する運用では成長に限界が生じます。
広告が占める比率が相対的に下がっていくなかで、認知から登録までのハードルを少しずつ下げる施策こそ、メディア成長のカギを握ると考えています。
バナー広告に視認効果はあるのですか?
「看護のお仕事」で実施した検証では、関連性のあるバナーを事前に見せたグループのCVRが、無関係なバナーを見たグループよりも1.5倍高いという結果が出ました。これは、ユーザーが広告に触れることで、意識や印象が変化している証拠です。
この実験結果を受け、現在はラストクリック用のクリエイティブだけでなく、視認効果を意識したバナーや動画制作も進めています。
インハウス運用のメリットと課題
なぜインハウスにこだわっているのですか?
第一に、マーケティングの知見を社内に蓄積できる点です。ユーザーの属性や流入経路によって期待されるROIが変化するため、きめ細かな判断が可能になります。結果として、施策の質が向上するのです。
次に、スピーディな対応が可能になる点も大きな利点です。社内にエンジニアやデザイナーがいるため、LP改善や新しい施策も即座に動かせます。
そして、最も重要なのは、運用者が自社事業の目的や価値に対して責任を持てること。獲得したユーザーが本当に価値を得ているかを意識しながら施策に向き合えるのは、インハウスならではの強みです。
一方で課題や難しさもあるのでは?
あります。まず人的リソースの確保と育成に時間と労力がかかる点。加えて、ナレッジの属人化を防ぐ仕組み作りも必要です。現在は週次での振り返り会議などを通じて、経験を言語化・共有する取り組みを進めています。
さらに、外部との接点が減ることで、他社との比較や最新トレンドの把握が難しくなる面もあります。この点は信頼できる代理店や他社との情報交換で補完しています。
代理店との理想的な関係とは
今後、代理店とはどう付き合っていきたいと考えていますか?
私たちのマーケティングの意図を理解し、短期的な成果ではなく長期的な視点で一緒に考えてくれるパートナーと連携したいと思っています。CPAを達成するだけでなく、その先の成果やサービス価値まで踏み込んで共に考えられる関係性が理想です。
もちろん、代理店にはプラットフォームの知見やスピード感といった強みがあります。最近では動画広告など、新しい領域へのチャレンジは代理店と連携して進めています。
運用者としての視点と挑戦
棚橋さんが考える「よい運用者」とは?
数字の裏にあるユーザーの意図に思いを巡らせることができる人です。単なる結果ではなく、そこに至る背景やプロセスを推察できること。それが運用者としての本質だと感じています。
今後の目標を教えてください。
広告が「売上にどう貢献するのか」をより明確にすることです。ブランド認知など非CPA領域の効果を定量化し、適切に投資判断ができる仕組みを整えていきたいと考えています。そのために、これからも検証と挑戦を重ねていきます。
編集後記
今回お話を伺ったのは、レバレジーズ株式会社 経営企画本部 メディア・システム部 マーケティンググループ 棚橋寿充さん。2012年に東京大学文学部を卒業後、同社へ新卒入社。アフィリエイト広告の運用からスタートし、社内でDSPを導入。2013年にはトレーディングデスクを立ち上げ、態度変容に関する効果検証を主導。2016年からは全社広告施策を統括するプロモーションチームを率いています。