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プログラマティック広告の世界的カンファレンス「Programmatic i/o in NY」参加レポート(後編)

fluct Magazine

2016.11.27

プログラマティック広告の世界的カンファレンス「Programmatic i/o in NY」参加レポート(後編)

Programmatic i/o NY 参加レポート(後編)

2016年10月末、ニューヨークで開催されたプログラマティック広告のカンファレンス「Programmatic i/o」に、fluctの執行役員・今井が参加しました。本記事ではイベント後編の内容を、注目キーワードごとにレポート形式でお届けします。

Audience Targeting(オーディエンスターゲティング)

目新しさはないように思われるかもしれませんが、今回あらためて「オーディエンスを正しく捉えること」への注目度の高さが印象的でした。広告主はユーザーインサイトと購買プロセスの理解をもとに、接触回数や心理状態を考慮しながら、メッセージやクリエイティブを最適化していく必要があります。

Googleは、Programmatic Guaranteedへの対応を通じて「オーディエンス×広告枠」の予約優先取引を強化する姿勢を示していました。

Video / TV Ads(動画・テレビ広告)

日本でも注目を集めている動画広告領域ですが、米国ではその熱量が一段と高く、動画マーケティングの成功が今後の競争優位を左右するという見方も広がっていました。

背景には、米国に根付くケーブルテレビ文化があります。テレビ自体が“プログラマティックに広告配信する媒体”として捉えられており、近年では“Addressable TV”という新たな概念も登場しました。

「スマホ・PC・タブレット・テレビ」といった複数デバイスに加え、フォーマット、クリエイティブ、オーディエンスの掛け合わせによってユーザーエンゲージメントを最大化する試みが進んでいます。

補足:テレビ広告の変遷

  • Traditional TV Ad Buying:年齢・性別などのセグメントでテレビ局からスポット枠を購入。
  • Programmatic TV:データベースに基づき特定オーディエンスを狙ってTVスポットを購入。
  • Addressable TV:世帯単位でのリアルタイム配信が可能。無駄の少ない広告運用を実現。


Latency(レイテンシー)

今回、多くのセッションで語られていたのがレイテンシー、つまり広告表示の遅延によるユーザー体験の損失です。Dyn社とCox Mediaのセッションでは、RTBの配信スピード向上と収益性向上の関連性が詳しく語られました。

サーバーサイドでの広告通信(SSAI)やExchange Biddingなど、技術面の取り組みも多数紹介されており、スピードが広告パフォーマンスに直結する時代であることを再認識させられました。

Complexities(複雑性)

広告主とメディアの間に存在する中間プレイヤーが多すぎるという構造的な課題もあらためて浮き彫りに。運用の煩雑さだけでなく、収益配分や取引の透明性、責任の所在の曖昧さに言及がありました。

データの透明性をいかに担保するか。そして、信頼できる技術パートナーとどう向き合うか。これらが市場全体の健全化に直結するという共通認識が醸成されつつあります。

最後に

「海外と日本の比較は単純ではない」。この視点をもって、Programmatic i/oの学びをどう自社・日本市場に還元するかが問われています。

米国ではデジタル広告費の約4割がブランディング目的に使われ、アドブロック普及率もすでに30%に迫る勢いです。一方、日本ではアドブロックの普及は約10%程度。こうした背景の違いを理解したうえで、今後のマーケティング施策を考える必要があります。

今回のカンファレンスで再確認されたのは、広告主とユーザーを正しくつなげるというシンプルな本質でした。健全なデジタル広告エコシステムの構築に向けて、引き続き議論と挑戦を重ねていきたいと思います。